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DPC/PDPSの診療報酬請求での留意事項をご説明します。個別指導、監査にお悩みの医師の方は、指導監査に強い弁護士にご相談下さい。

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12 診療報酬請求の留意事項(12):DPC/PDPSについて

医科の指導監査に強い、弁護士の鈴木陽介です。

サンベル法律事務所は、全国からご依頼を頂き、個別指導と監査の対応業務を行っています。

個別指導、監査には、弁護士を同席させるべきです。まずはご相談下さい。


弁護士鈴木が力を入れている指導監査のコラムです。

ここでは、医科診療報酬請求の留意事項(DPC/PDPS)についてご説明を致します。 内容は、厚生労働省保険局医療課医療指導監査室の公表資料「保健診療の理解のために【医科】(平成28年度)」に基づいており、弁護士鈴木が適宜加筆修正等しています。

個別指導、監査に悩んでいる医師の方は、指導、監査に詳しい弁護士への速やかな相談をお勧めします。個別指導、監査においては、弁護士を立ち会わせるべきです。以下のコラムもご覧いただければ幸いです。

 指導監査のコラム

1  個別指導と監査の上手な対応法

第1 DPC/PDPSとはなにか


 DPC 制度(DPC/PDPS)は、平成 15 年 4 月、閣議決定に基づき、特定機能病院を対象に導入された、急性期入院医療を対象とした診療報酬の包括評価制度である。DPC(Diagnosis Procedure Combination)は 、わが国独自の患者分類としての「診断群分類」の略称であり、PDPS(Per-Diem Payment System)は 、「1日当たり包括支払い制度」の略称である。診断群分類に基づく1日当たり定額報酬算定制度、いわゆる「DPC 制度」の略称は、DPC/PDPS (Diagnosis Procedure Combination / Per-Diem Payment System)である。
 なお、平成 28 年 4 月 1 日現在、DPC/PDPS 対象病院数は 1667、約 49 万 5 千床となり、全一般病床の約55%を占めるに至っている。

第2 制度の概要


 1 診断群分類の基本構造

 診断群分類は、まず、18 の「主要診断群(MDC:Major Diagnostic Category)」と呼ばれる疾患分野ごと(例えば MDC01:神経系疾患、MDC02:眼科系疾患、MDC03:耳鼻咽喉科系疾患など)に大別され、それぞれ傷病により分類される。次に、診療行為(手術、処置等)、重症度等により分類されている。傷病名は国際疾病分類である ICD10(ICD:International Classification of Diseases)により、診療行為等については診療報酬上の区分により定義され、重症度等については傷病ごとに評価する重症度等の指標が設定されている。

 2 診断群分類の構成

 すべての診断群分類は、数字と'x'からなる 14 桁の診断群分類番号であらわされ、桁ごとに意味をもつ。

《診断群分類の見直し》
 診断群分類は、臨床専門家等により構成されるMDC毎作業班における見直し案の報告及びDPC対象病院等の退院患者に係る調査に基づき、診療報酬改定時のほか、高額薬剤の保険収載等に応じて部分的には随時見直されている。現在は 18 主要診断群、506 疾患、5078 診断群分類、うち包括対象の分類は 4404 分類(平成 28 年度改定における数)から構成されている。

 3 診断群分類の決定方法

 診断群分類は、「医療資源を最も投入した傷病」により決定される。「医療資源を最も投入した傷病名」とは、入院患者の入院期間全体を通してみて、治療した傷病のうち、最も人的・物的医療資源を投入した傷病のことであり、1入院中に複数の傷病に対して治療が行われた場合でも、「医療資源を最も投入した傷病」は一つに限る。「医療資源を最も投入した傷病」が不明な時点では、「入院の契機となった傷病」に基づいて診断群分類を決定する。
 なお、包括評価の対象診断群分類に該当しない患者は出来高算定となる。

《診断群分類の決定の手順》
@ 「医療資源を最も投入した傷病名」の決定
A 「医療資源を最も投入した傷病」に対応するICD10 が分類されている診断群分類の検索
B 診断群分類を決定するために必要な診療行為等に基づく診断群分類の決定。 (診断群分類ツリー図、定義テーブル、診断群分類点数表、診断群分類電子点数表を活用する。)
※診断群分類点数表
 包括評価の対象となる診断群分類ごとに1日当たり点数等を規定している。
※診断群分類ツリー図、定義テーブル
 「ツリー図」は包括評価の対象外となった診断群分類を含めて全診断群分類を体系的に図示しているもので、通知により示されている。
 「定義テーブル」には「ツリー図」の分岐の基準の定義を記述している。
※診断群分類電子点数表
 各医療機関における医事会計システムに対応しやすい形に整えた診断群分類点数表、定義テーブルである。

 4 平成 28 年度 DPC 制度対象病院の基準

@ 一般病棟入院基本料等の7対1又は10対1入院基本料に係る届出
A 診療録管理体制加算に係る届出
B 標準レセプト電算処理マスターに対応したデータの提出を含め厚生労働省が毎年実施する「DPC導入の影響評価に係る調査(特別調査を含む。)」に適切に参加、入院診療及び外来診療に係るデータを提出
C 上記Bの調査において、適切なデータを提出し、かつ、調査期間 1 か月当たりの(データ/病床)比が 0.875 以上
D 「適切なコーディングに関する委員会」を設置し、年 4 回以上、当該委員会を開催

 5 包括評価の対象患者

@ 包括評価の対象患者は、DPC 対象病棟の入院患者のうち、包括評価の対象となった「診断群分類」に該当した者である。
A ただし、以下の者を除く。
・入院後 24 時間以内に死亡した患者、生後 1 週間以内に死亡した新生児
・評価療養、患者申出療養を受ける患者
・臓器移植患者の一部
・回復期リハビリテーション病棟入院料等の算定患者
・その他厚生労働大臣が定める者

第3 診療報酬の算定方法


 1 包括評価制度における診療報酬の額

 包括評価制度における診療報酬の額は、包括評価部分と出来高部分で構成されている。

 診療報酬 = 包括評価部分 + 出来高部分

@ 包括評価部分
 「診断群分類」ごとの1日当たりの包括評価であり、医療機関別係数による調整が行われる。
 
 包括範囲点数 = 診断群分類ごとの1日当たり点数 × 医療機関別係数 × 入院日数

【包括評価の範囲】
 入院基本料、入院基本料等加算(総合入院体制加算等に限る)、医学管理等(手術前医学管理料及び手術後医学管理料に限る)、検査(カテーテル検査(心臓、肺、肝臓、膵臓)、内視鏡検査、血液採取以外の診断穿刺・検体採取料を除く)、画像診断(画像診断管理加算1、画像診断管理加算2及び選択的動脈造影カテーテル手技を除く)、投薬、注射、1,000点未満の処置料、手術・麻酔の部で算定する薬剤・特定保険医療材料以外の薬剤・材料、病理標本作製料 等
※選択的動脈造影カテーテル手技:区分E003に掲げる造影剤注入手技(「3」の 「イ」に規定する主要血管の分枝血管を選択的に造影撮影した場合に限る。)

A 出来高部分
 「医科点数表」に基づいた評価が行われる。

【出来高評価の範囲】
 入院基本料等加算(総合入院体制加算等を除く)、医学管理等(手術前医学管理料及び手術後医学管理料を除く)、在宅医療、リハビリテーション(薬剤料を除く)、精神科専門療法(薬剤料を除く)、手術、麻酔、放射線療法、カテーテル検査(心臓、肺、肝臓、膵臓)、内視鏡検査、血液採取以外の診断穿刺・検体採取料、画像診断(画像診断管理加算1、画像診断管理加算2及び選択的動脈造影カテーテル手技に限る)、処置料(基本点数が1,000点以上の処置に限る)、病理診断・判断料、無菌製剤処理料、術中迅速病理組織標本作製、HIV感染症に使用する抗ウイルス薬(HIV感染症治療薬)、血友病等に使用する血液凝固因子製剤、慢性腎不全で定期的に実施する人工腎臓及び腹膜灌流等、 手術・麻酔の部で算定する薬剤・特定保険医療材料

 2 「診断群分類」ごとの1日当たり点数

 在院日数に応じた医療資源の投入量を適切に評価する観点から、診断群分類ごとの1日当たりの包括点数は、在院日数に応じて逓減する仕組みとなっている。
・入院初期を重点評価するため、在院日数に応じた3段階の定額報酬を設定しており、例外的に入院が長期化する患者(アウトライヤー)については平均在院日数から標準偏差の 2 倍以上の 30 の整数倍を超えた部分については、医科点数表により出来高算定とする。

・実際の医療資源の投入量に応じた評価とするため、以下の4種類の点数設定パターンがある。

通常の場合(設定方法A)
 診断群分類入院日数の 25 パーセンタイル値(入院期間T)までは平均点数に15%加算し、平均在院日数を超えた日から前日の点数の85%または、入院期間Vの 1 日当たりの医療資源の平均投入量のうち、低い点数で算定。

入院初期の医療資源の投入量が非常に大きい場合(設定方法B)
 入院期間Tは、その期間での平均点数とし、平均在院日数を超えた日から前日の点数の 85%または、入院期間Vの 1 日当たりの医療資源の平均投入量のうち、低い点数で算定。

入院初期の医療資源の投入量が小さい場合(設定方法C)
 入院期間Tは、平均点数に 10%加算し、平均在院日数を超えた日から前日の点数の 90%または、入院期間Vの 1 日当たりの医療資源の平均投入量のうち、低い点数で算定。

高額薬剤等に係る診断群分類(設定方法D)
 入院基本料を除く薬剤費等包括範囲点数を入院期間T(1 日で固定)で算定し、平均在院日数までは入院基本料の1入院当たりの点数で算定。平均在院日数を超えた日から従来方式(前日の点数の 90%または 85%)または、入院期間Vの1 日当たりの医療資源の平均投入量のうち、低い点数で算定。
 

 3 医療機関別係数による評価・調整

 各医療機関の医療機関係数は以下の4つを合算したものである。
 
 医療機関別係数=基礎係数+機能評価係数T+機能評価係数U+暫定調整係数

 基礎係数は、役割や機能に着目した医療機関の群別に設定されている。医療機関群は「DPC 病院T群(大学病院本院)」、「DPC 病院U群(大学病院本院に準じる病院。」、「DPC 病院V群(T群、U群以外)」のV群である。
 DPC/PDPS の円滑導入のために設定された調整係数は、平成 30 年度を目処に段階的に基礎係数と機能評価係数Uへの置換えを進めることとされており平成 28 年度改定においては調整部分の 75%を機能評価係数Uに置換え、残りの調整部分を「暫定調整係数」として設定することとなった。

@ 機能評価係数T
 出来高評価体系における「当該医療機関の入院患者全員に対して算定される加算」や「入院基本料の補正値」等を評価する係数。

A 機能評価係数U
 診療実績や医療の質的向上への貢献等に基づき、医療機関が担うべき役割や機能を評価する係数。保険診療指数、効率性指数、複雑性指数、カバー率指数、救急医療指数、地域医療指数、後発医薬品指数、重症度指数の 8 つの項目からなる。項目に応じて各医療機関群の特性を踏まえた評価手法となっている。

 4 特定入院料の取扱い

@ 急性期型特定入院料を算定している間も包括評価対象診断群分類に該当する場合には、包括評価の対象となる。
・急性期型特定入院料とは、救命救急入院料、特定集中治療室管理料、ハイケアユニット入院医療管理料、新生児特定集中治療室管理料等のことである。

A 包括評価の対象となる場合には、急性期型特定入院料を算定する期間には、特定入院料を算定せず1日当たりの加算点数を算定することとされている。
・救命救急入院料1 3日以内 7825 点 等

  また、包括範囲は、DPC包括評価制度の包括範囲に整理されている。
・例えば、特定集中治療室管理料に係る加算を算定している期間であっても心臓カテーテル検査に係る手技料等は算定できる。(医科点数表では包括評価の範囲に含まれている。)
・ただし、1日当たりの加算点数を算定している期間は、地域加算以外の入院基本料等加算は算定できない。
 

 5 7日以内の再入院(再転棟)について

@ 同一傷病(診断群分類番号の上2桁が同一のもの)における7日以内の再入院及び再転棟については、前回入院と一連の入院と見なして取り扱うものとする。
  また、再入院の契機となった病名が、分類不能コードである場合も、前回入院と一連の入院とみなす。

A 同一傷病に該当するか否かの判断については、前回入院の際の「医療資源を最も投入した傷病名」の上2桁と、再入院の際の「入院の契機となった傷病名」の診断群分類番号の上2桁により判断する。

B 7日以内に同一傷病で再入院する場合であっても、再入院時に悪性腫瘍にかかる計画的な化学療法を実施する場合は、起算日は再入院した日とする。

C 再入院後に診断群分類の変更があった場合については、1回目の入院から診断群分類を変更して退院月に差額の調整を行う。
 

 6 持参薬について

 入院が予定されている場合に、当該入院の契機となった傷病の治療に係るものとして、特段の理由がない限り、あらかじめ処方された薬剤を患者に持参させ、入院中に使用することは認められない。(特段な理由とは、単に病院や医師等の方針によるものではなく、個々の患者の状態等に応じた個別具体的な理由であることが必要である。やむを得ず持参薬を入院中に使用する場合は、当該特別な理由を診療録に記載すること。)

 7 診療報酬請求時の留意点

@ 診療報酬明細書については、診療行為の内容が分かる情報(「コーディングデータ」という。)も記載する。特定入院料等を算定する期間については、当該特定入院料等に包括される診療行為等のうち、コーディングに関係する診療行為等も併せて記載する。

A 診療報酬の請求方法は、患者の退院時に決定された請求方法をもって、ひとつの入院期間において統一する。例えば、入院当初は診断群分類点数表により算定(いわゆる「包括」)していた患者が、診療方針の変更等により、退院時には医科点数表により算定(いわゆる「出来高」)することとなった場合は、入院期間を通して「出来高」で算定する。


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指導監査のコラム


指導監査に関するコラムです。
個別指導、監査の際に、また日常の医院運営にご活用下さい。

 診療報酬請求の留意事項のコラム

1  診療報酬請求の留意事項(1):診療録(カルテ)
2  診療報酬請求の留意事項(2):傷病名、レセプト病名
3  診療報酬請求の留意事項(3):基本診療料、入院基本料
4  診療報酬請求の留意事項(4):医学管理、自動算定
5  診療報酬請求の留意事項(5):在宅医療、在宅療養指導管理料
6  診療報酬請求の留意事項(6):検査、画像診断、病理診断
7  診療報酬請求の留意事項(7):投薬、注射、輸血、血液製剤
8  診療報酬請求の留意事項(8):処置、手術、麻酔
9  診療報酬請求の留意事項(9):リハビリテーション
10 診療報酬請求の留意事項(10):精神科専門療法
11 診療報酬請求の留意事項(11):食事療法、ビタミン剤投与
12 診療報酬請求の留意事項(12):DPC/PDPSについて

 保険医取消の実例紹介のコラム

1  保険医取消の実例:後発医薬品を先発医薬品とする不正請求
2  保険医取消の実例:診療報酬不正請求による逮捕と保険医取消
3  保険医取消の実例:検査結果の廃棄、保険適用外診療の不正請求
4  保険医取消の実例:死亡患者の診療報酬請求、コンタクトの不正
5  保険医取消の実例:鍼灸院や整骨院との不正請求、診療録の不作成
6  保険医取消の実例:監査の不出頭、カルテの改ざんによる取消処分
7  保険医取消の実例:無診察処方、無診察投薬による取消処分
8  保険医取消の実例:個別指導中の医師の入院と指導の延期

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